骨盤の歪みとは?

そもそも骨盤とは何か

“骨盤”とは一つの骨を指すのではなく、

《仙骨》を挟む2個の《寛骨》から成る複合体です。

 

《寛骨》は腸骨・坐骨・恥骨の3つの骨が成人に成るまでに一体化して一つの骨になったものです。

骨盤説明
骨盤複合体

骨盤のどこがどのくらいずれるの?

後方には2つの仙腸関節があります。前方には恥骨結合があり、骨盤はこれら3つの関節から複合体を形成しています。

 

真ん中の“仙”骨と、左右の“腸”骨から成る関節なので“仙腸”関節と言います。

仙腸関節説明
模型を分解するとこんな感じです

仙腸関節の関節面はアルファベットの"C"や耳の形にとよく似ています。これにも個人差があり様々です。

仙腸関節面の説明

仙骨側の関節面は凹状に、腸骨側の関節面は凸状になっており、これらが重なり合うことで関節がずれにくい構造になっています。

仙腸関節面の説明

“骨盤がずれる”とは一体どの程度のことを言うのでしょうか?

 

この仙腸関節という場所は、かつては“不動関節”と言われ、動かない関節であると考えられていましたが、現在では可動関節だと考えるのが一般的になっています。

 

しかし、仙腸関節がどのように・どれくらい・どこを中心に動くのかに関しては現在でもはっきりとわかっていないと言われています。

 

具体的に、この関節のずれを数値で表そうとすると、おそらく紙数枚分程と考えて良いでしょう。

「骨盤のずれや歪みを治しましょう」と言ったところで紙数枚分のずれなのです。

 

しかし、そのミクロ単位のずれが体に大きな影響を及ぼすことに間違いはありません。

骨盤の役割は?

凹凸面から成る仙腸関節によって、ずれにくい構造を持つ骨盤ですが、そのメカニズムは《仙骨のキーストーン効果》と呼ばれています。

 

キーストーンとはアーチの頂上部分にある要石(かなめいし)と呼ばれるもので、構造を安定させるのに不可欠なものです。

 

要石と、アーチを作る石がうまく噛み合っていないと、上からの圧力に耐えきれず崩れ落ちてしまいます。

石橋の要石
アーチ橋を安定させるための要石

仙骨は骨盤の中でこのキーストーンとよく似た役割を担っています。

仙骨のキーストーン効果

上半身の重みは仙骨にかかった後、左右に分配され、その力は仙腸関節を通して骨盤内の輪をつくります。

 

また、床からの反応で下半身から上向きに伝わる力は恥骨結合に向かって分かれます。

 

上からと下からの力が衝突し、その衝撃は全て骨盤の輪の中へ吸収されます。

 

仙腸関節は衝撃を骨盤の中にうまく吸収させるための大事な役割を担っています。

仙腸関節に微少なズレが生じると、この力が骨盤内にうまく吸収されず、代わりに恥骨結合の方で吸収しようとします。

 

しかし、恥骨結合にも歪みが生じている場合、次は腰椎や股関節へ力が分散する事になり、腰痛や股関節痛に繋がる可能性が出てくるのです。

 

ですので、脊柱の土台である仙骨と左右の寛骨が三つ巴となって骨盤が正しく機能する事が、体幹を支える上で重要になります。

 

このように骨盤内にある仙腸関節は、“関節”という名前こそついていますが、他の関節と違う重要な機能を担っています。

 

また、年齢によってこの関節の形状が変わり、高齢になると仙腸関節の運動性は失われていきます。

一般的にメディカルの分野ではこの仙腸関節については残念ながら重要視されません。

 

“腰”は“人の要”と書きますが、さらにその腰の土台となっている“骨盤の要”である仙骨と腸骨が成す関節は、カイロプラクティックでは避けて通ることの出来ない大事なポイントになります。

骨盤を強固に守るもの

骨盤の要となっている仙骨が簡単にずれないのは、周りに張り巡らされた多くの《靭帯》によって強固に守られているためです。 

仙腸靭帯説明
左は後面から、右は前面から見た骨盤

上の図のように骨盤は色々な種類の靭帯によって強固に保護され、簡単にずれないようになっています。

 

これらの靭帯が緩んでしまうと、仙骨のキーストーン効果による構造が崩壊し、結果的に症状が長引く原因になります。

 

この場合、靭帯をより伸張させるような施術を受けてしまうと骨盤は不安定さを増します。

 

骨盤の不安定性によって症状が出ている場合は、靭帯を傷付けないような調整が必要です。 

 

靭帯の緩みによって痛みが出ている場合は関節を動かすのではなく、動かないようにしてあげる事が最優先となります。

 

極端な話、何も触らないでおく事が症状改善の近道になる場合もあります。

 

もちろん、この仙腸関節の微少なズレが原因で起こる症状は的確なアジャストメントが必要です。

骨盤矯正ってなに?

骨盤矯正=骨盤の歪みを治すための矯正

 

というイメージを持たれている方が多いと思います。間違いではないのですが、単純に傾きやねじれだけを正すという風にすると、大きな代償を払うことになり兼ねません。

 

当院では骨盤だけに限ったことではありませんが、機能や特徴を理解して、また一人ひとりの骨格の個性を尊重した上で矯正に当たっております。

 

人間の体には骨盤意外にも関節複合体が多数存在していますが、世間的にはなぜか骨盤の形や傾きだけがフューチャーされがちです。

 

骨盤の《構造》だけではなく《機能》を重要視する考え方もまた、カイロプラクティックの長きにわたる理論です。

 

カイロプラクティックだけでなく、今や様々な分野で《機能重視》や《多機能》が取り沙汰される時代となっています。

 

骨盤矯正も、構造から機能重視にシフトチェンジしませんか?